口腔外科医のお役立ちコラム Useful Columns
時代とともに変わる歯科治療
昭和の時代は虫歯が氾濫し、歯周病はぐらぐらし始めると全て抜くという治療法が主流でした。また、その時代にはぐらぐらした歯と歯を繋いだり、失った歯の両隣の歯を含めてどんどん連結するブリッジという治療法が安易で早く噛めるようになるということで選択され、多い場合には10本以上の歯がつながれているという場合もありました。
これらの複数の歯をブリッジや連結でつないだ結果がどうなったかと言うと、その連結した中の1本が悪くなってもわからず、気づいたときには、連結した複数の歯を全て失うということになってしまいます。
1本の歯を失ったからといって両隣の悪くもない歯を削って3本まとめてブリッジにしたことで10年後に悪くない歯も含めた3本とも失うという結果にもなりかねないのです。
平成、令和の時代になり虫歯の数は歯科医師、歯科衛生士の活動、学校教育の力添え、家庭での取り組みの変化などで激減してきました。
これは素晴らしいことですが、その一方であまり硬いものを食べず、柔らかいものを食べるという傾向から歯並びが悪くなり矯正治療が必要な人や歯周病の方が多くなってきました。さらにストレス社会の影響からか歯ぎしり食いしばり、そして顎関節症の患者さんが増え続けています。
また、それとは違う流れとして芸能人や、一般の若い世代を中心にホワイトニングが当たり前になり、審美歯科や美容歯科といったきれいな歯を得るための治療が脚光を浴びています。
白く綺麗な歯に関心が集まり歯のお手入れが進むことは非常に喜ばしいことです。
しかしながらここで注意すべきことがあります。
白いきれいな歯を売り物として虫歯でもない歯の神経を取ったり後から神経を取らないといけなくなるような状態で歯を削って差し歯にする心無い歯医者さんが増えていることも現実で、そのような歯医者さんにある意味、騙されないようにすることが大切な時代になってきました。
今後は矯正治療や白くきれいな歯を得るための歯科治療が中心になってくるかもしれませんが、そのような歯科治療を行っている歯科医師の中には医療従事者としての良心を疑うような人もいることに警鐘を鳴らしたいと思います。