エプーリス Glossary Epulis
エプーリス
歯肉に生じる表面は比較的平滑で、半球状、結節状や分葉状を呈する有茎性ないし広基性の腫瘤で、硬さや色調は組織より異なりますが、炎症や慢性機械的刺激などによる反応性増殖物とされ、真の腫瘍とは異なります。
発生は、歯肉結合組織、歯根膜、歯槽骨膜からで、この発生母地よって切除の範囲が異なることになります。
唇・頬側の歯間乳頭部歯肉に好発するが、舌側、口蓋側や無歯部の歯肉にも生じます。
好発は、20~40歳代の女性にやや多くみられます。
分類
病理組織学的な分類は次のようなものがありますが、肉芽腫性エプーリス、線維性エプーリス、骨形成性エプーリス、セメント質形成性エプーリス、血管腫性エプーリス、巨細胞性エプーリス、末梢血管拡張性エプーリス、それとは別に妊娠中の女性に発生する妊娠性エプーリスや生まれたときにすでに存在する先天性エプーリスなどがあります。
妊娠性エプーリスは、出産をすることで自然に消失します。先天的エプーリスは、前の歯肉に生じることが多く、生まれつきの突起物として認識されます。
治療
エプーリスの治療は、病変部位を切除することが基本となりますが、前述したように発生母地が異なるため、発生母地を含んで切除することが重要になり、再発するリスクを考えて抜歯することもあります。
発生母地と切除範囲
- 歯肉結合組織
エプーリスと周囲の歯肉を切除 - 歯根膜
エプーリス切除と周囲の骨を開削または当該歯を抜歯 - 歯槽骨膜
エプーリス切除と周囲の骨を開削
検査・診断
エプーリスは、口腔がんのような悪性腫瘍や脂肪種、繊維種のような良性腫瘍とは異なりますが、専門家が診断にあたれば、視診・触診で両者を比較的に容易に鑑別診断することがきます。
エプーリスの症例
【症例3】30歳代 女性
【症例2】40歳代 女性
【症例1】70歳代 男性
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- 【症例3】
左側上顎前歯部エプーリス
30歳代 女性
(出血などの症例画像あり) -
左側上顎前歯部の腫瘤を主訴に来院された。炎症反応からのエプーリスと考え、まず同部を含め徹底的なクリーニングを行って変化を見るも改善せず、本人も切除を希望したため切除した。
(費用:保険診療)左側上顎前歯部歯肉に発赤を伴った腫瘤を認める。痛みなどはない。
手術所見、腫瘤の周囲の歯肉を切開し、歯根膜由来のエプーリスと診断して中切歯の歯根膜を合わせて切除した同部には歯肉の回復を期待して人工被覆材 テルダーミスを置きサージカルパックで創部を被覆した。サージカルパックは2週間後に除去した。
- 【症例3】