鼻口蓋管嚢胞 Glossary Nasopalatine Cyst
鼻口蓋管嚢胞とは
胎生期の鼻口蓋管の上皮遺残に由来する顎骨の非歯原性発育性嚢胞。
上顎の正中で前歯の根の後ろあたりに、鼻口蓋管(切歯管)と呼ばれる、神経と血管が通る管があります。ここにできる皮袋=嚢胞が、鼻口蓋管あるいは切歯管嚢胞とも呼ばれる病気です。
嚢胞=皮袋が、小さいものでは症状はありませんが、袋が大きくなると、上顎の前歯の裏側が腫れたり、痛みを伴うようになるなどの自覚症状が出てきます。
このように自覚症状が出てから気づく場合と、むし歯などの治療に伴い、偶然に撮影したX線写真で発見される場合とがあります。
どんな病変か・原因は
嚢胞が小さいときには無症状ですが、大きくなると、口蓋部に膨らみを感じるようになり違和感や痛みを感じる場合もあります。また、感染すると膨らんだ部分から排膿することもあります。
エックス線所見としては、境界は明瞭な類円形の透過像として認められますが、前鼻棘という鼻の下の骨が重なることでハート型の透過像として見えることもあります。
病理学的特徴
組織学的には、立方上皮や線毛円柱上皮あるいは扁平上皮が裏装することが多いですが杯細胞であるgoblet cellが介在して粘液を分泌している像も見られることがあります。
治療の方法
治療:全摘出摘が行われます。
症例
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- 鼻口蓋管嚢胞摘出
(出血などの症例画像あり) -
CASE.01
28歳、女性
前医で歯科治療のためにパノラマレントゲンを撮影し,上顎前歯部の根尖に類円形の透過像を認め、歯根嚢胞と誤診され根管治療を受けましたが、全く治癒しないので、CTを撮影したところ、根尖とは関係のない部位に病変を認め、鼻口蓋管嚢胞の診断にて、当クリニックを受診された患者さんです。
鼻口蓋管嚢胞の診断下、摘出術を施行することにしました。
鼻口蓋管嚢胞のCT所見 点線で囲む範囲に嚢胞による骨の吸収が認められる。
- 鼻口蓋管嚢胞摘出