口腔扁平苔癬 Glossary Oral Lichen Planus
口腔扁平苔癬とは
前がん状態(口腔がんになる可能性がある粘膜疾患)です。
扁平紅色苔癬ともいわれ、口腔粘膜だけでなく皮膚にも発生することがある疾患です。
口腔扁平苔癬は角化異常を伴う難治性炎症で、日常の臨床で比較的よく見られる疾患です。
自覚症状のない場合でも、前がん状態の範疇に入りますので、定期的な経過観察が必要です。また、口腔扁平苔癬と類似した所見を示すものに前がん病変である白板症や紅板症があり、診断が必要です。
原因
原因は不明で、外傷性、細菌性、梅毒性、寄生虫性、ウイルス性、糸状菌性、アレルギー性、中毒性、神経または神経原性、遺伝性などいくらかの説があります。また、C型肝炎などや口腔内刺激および喫煙などが増悪因子として関与するといわれています。
臨床的特徴
口腔粘膜における罹患率は、0.02%~0.22%と報告されています。年齢的には40~50歳代に、性別では女性にやや多いと報告されています。
好発部位は80~90%が頬粘膜で、舌、口唇(とくに下口唇)、口蓋、歯肉にも認められます。
臨床症状
口腔粘膜に幅1~2mmぐらいのレース状、網状の模様を呈し、白い線状の内側には発赤やびらんを認めますが、この網状模様は日時の経過とともに赤みを帯びたり、その形状を変え、接触により出血し痛みも伴います。
病変は左右対称に生じることが多く、片側だけに病変が見られる場合には他の疾患との鑑別が必要になります。
口腔扁平苔癬は多彩な像を呈するために網状型、丘疹型、線状型、斑状型、びらんまたは潰瘍型、小水疱型、色素沈着型など種々の分類がなされいます。
自覚症状としては、疼痛がもっとも多く、次いで口腔の荒れ、出血、不快感、味覚異常、灼熱感などを伴うことも多く見られます。
症状は慢性経過をとり、なかなか治療が奏功せず1~10年程度の長期間にわたって症状がみられるものがの多いとされています。
慢性炎症を繰り返すために正常上皮よりも癌発生の母地となりやすいという考えがあります。
治療
原因不明であり、確実な治療法はありません。対症療法として副腎皮質ホルモン口腔用軟膏(ケナログ、デスパコーワ、デキサルチンなど)の塗付、ビタミンA製剤の使用、それと当クリニック院長の新谷により開発されたフコイダン療法が推奨されます。
口腔扁平苔疥癬様病変
金属アレルギーによる粘膜疾患
ORAL LICHEN PLANUS LIKE LESION
口腔扁平苔癬は、口腔粘膜に慢性に角化異常をきたし、40~70才台の女性に多く、80%以上は歯列咬合面を中心とした頬粘膜、舌、口唇、口蓋、歯肉に発生する病変です。白い網目状、レース状模様が変化し、扁平紅色苔癬と呼ばれる赤くなる状態化するなど多彩な像を呈して、網状型、丘疹型、線状型、斑状型、びらん・潰瘍型、小水疱型、色素沈着型に分類されます。
その類似疾患に口腔扁平苔疥癬様病変は、口腔内の金属(歯の詰め物や被せ物)による金属アレルギー(特に歯冠のアマルガム合金や義歯の金属バネ)、ガルバニー電流(歯冠の微弱電流)、口内の不衛生などが原因のもので、治療により治る病変です。
金属抗原除去療法、それに点滴療法、DETOX内服療法を行うことで奏功することも多く、これらを組み合わせる新谷メソッドは非常に有効な治療法であると考えます。
金属除去と新谷メソッドによるDETOXで前がん病変が消失した症例
25歳の女性で、両側頬粘膜・上下唇のザラザラ感を10数年前より自覚するも放置していたそうですが、最近になりざらざら感は増してきたため受診されました。
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大学病院で前がん病変と診断され、治療法がないということで受診された頬粘膜に発赤とびらんを認める
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前がん病変と診断された病変が、歯科用金属の除去と「新谷メソッド」で消失していることがわかる
新谷メソッドによる
口腔粘膜疾患(前がん病変)の治療効果
口腔扁平苔癬の症例集
CASE.07
両側頬粘膜ならびに舌背部口腔扁平苔癬(60歳代 男性)
両側の頬粘膜と舌背部に発赤・びらんと白いレース状の病変を認めた。頬粘膜はザラザラ感のみ症状も軽微であったが、舌はピリピリ感も伴っていた。
アズノールうがい液を処方するとともにフコイダンクリーム(1本2,200円)の塗布をお願いした。
舌のピリピリ感が持続したため、立効散の追加処方を行い、症状の改善を見た。(費用:保険診療)
初診時の口腔内所見 両側頬粘膜に発赤、びらんと白いレース状病変が認められ、舌背部には発赤と白色病変を認める。
舌などにできる口腔扁平苔癬はピリピリ感が強く舌痛症の症状も併発する可能性もあり、立効散などの漢方薬が奏功することがある。
CASE.06
両側舌口腔扁平苔癬(40歳代 女性)
舌の両側舌縁部から口腔底にかけて発赤・びらんと白いレース状の病変を認め、ザラザラ感と刺激物がしみるなどの症状があり、口腔扁平苔癬と診断した。
食前にサルコートの使用を指示し、アズノールうがい液を処方するとともにフコイダンクリーム(1本2,200円)の塗布をお願いした。数か月後、若干のかなり症状改善を認めるものの、寛解と増悪を繰り返し今に至る。
増悪時には細胞診を行い、がん化のチェックを行うもClassIIIb(偽陽性)で悪性化はない。(費用:保険診療)
舌などにできる口腔扁平苔癬はがん化する可能性もあり、数か月ごとの厳重な経過観察が必要である。
初診時の口腔内所見 両側の舌縁部に発赤、びらんと白いレース状病変が認められる。
特に左側の病変は白板症との鑑別が重要で細胞診などを行い、悪性化の有無を含めた厳重な経過観察が必要になり、場合により生検も行うことが必要となる。
CASE.05
両側頬粘膜口腔扁平苔癬(40歳代 女性)
両側頬粘膜に発赤びらんと白いレース状の病変を認め、口腔扁平苔癬と診断した。
食事の際、刺激物が染みるなどの症状が強いときにはサルコートの使用を指示し、アズノールうがい液を処方するとともにフコイダンクリーム(1本2,200円)の塗布をお願いした。
2週間後かなり自覚症状は改善したが、本人とも相談の上、金属の補綴物をノンメタルに交換し、矯正治療も行った。
費用:保険治療+F-core(22,000×4)+emax.Cr(121,000×4)+emax.In(77,000×5)=総額¥957,000(税込)
金属の補綴物を除去後、両側頬粘膜の病変は消失、8年半経過した現在、再発などの所見はない。
初診時の口腔内所見 両側の頬粘膜に発赤、びらんと白いレース状病変が認められる。
CASE.04
両側頬粘膜口腔扁平苔癬(20歳代 女性)
症状は両側頬粘膜のざらざら感で、刺激物などの摂取により痛みを覚えることがあった。両側頬粘膜口腔扁平苔癬の診断下、サルコート、アズノールうがい液を処方し、フコイダンクリームの塗布を指示した。このような症例では、前がん状態であることも踏まえ数か月ごとの経過観察が重要である。
(費用:保険診療、フコイダンクリーム1本¥2,200)
初診時の口腔内所見:発赤びらんのとともに、レース状の白色病変を認める。
CASE.03
両側頬粘膜口腔扁平苔癬(30歳代 女性)
両側頬粘膜口腔扁平苔癬の診断下、アズノールうがい液を処方して経過観察中である。金属の補綴物の非金属:ノンメタルへの交換を行い、5年後の現在、病変はほぼ消失している。
(費用:保険治療 インレー(詰め物)はCRレジンに交換した)
初診時の口腔内所見:発赤・びらんの所見は乏しく、ザラザラ感を訴えていた。
CASE.02
両側頬粘膜ならびに歯肉の口腔扁平苔癬(50歳代 女性)
両側頬粘膜ならびに上下歯肉の口腔扁平苔癬の診断下、サルコート、フコイダンクリーム、アズノールうがい液を処方して経過観察中である。金属の補綴物のノンメタルへの交換は他院ですでに行っていた。
(費用:保険治療)
何もしなくても痛いなどの症状は緩和したが、寛解と増悪を繰り返している。口腔扁平苔癬は前がん状態でもあり慎重に経過観察を行うことが重要である。
CASE.01
両側頬粘膜口腔扁平苔癬(40歳代 男性)
両側頬粘膜 口腔扁平苔癬の診断下、サルコート、フコイダンクリーム、アズノールうがい液を処方するとともに金属の補綴物を非金属:ノンメタルに交換した。
費用:保険治療+F-core¥22,000×2、Zr.Cr.¥99,000×2、Zr.In.¥55,000×2=総額¥352,000(税込)
9年後、右側頬粘膜の病変はほぼ消失、左側頬粘膜は一部、発赤が残存するも食事の際に醤油、わさびがしみるなどの症状は大幅に緩和している。
【初診時の口腔内所見】
発赤、びらんと白いレース状病変が認められる。