骨形成線維腫 Glossary Ossifying Fibroma
骨形成線維腫とは
骨形成線維腫(Ossifying fibroma)は骨からできる骨原性の腫瘍(できもの)とセメント質(歯の根の部分にある象牙質の外を覆う硬組織)からできたいわゆる歯原性の腫瘍の二つに分類されていました。
しかし、骨組織とセメント質の組織が混ざったものが多いということで、この二つの分類が非常に困難なために、WHO分類(1992年)において、セメント質骨形成線維腫として一つにまとめられました。
骨原性腫瘍と分類されたが、歯原性腫瘍と主張するものも少なくありません。
【コメント】
病理学者は、どちらの組織からできているのかを議論しますが、臨床家からすると骨か歯のどちらが主体をなすかの違いで、摘出すれば再発もなく治癒します。
ただ、どうしてこんな腫瘍ができるのかは知りたいですね
どんな病変か・原因は
成人、特に中年女性の下顎臼歯部に好発し、ゆっくりと進行する顎骨の膨隆がみられます。
エックス線像としては、周囲骨との境界は明瞭で、透過像として認められます。
病期により透過像として認められる時期、透過像と不透過像の混在像として認められる時期、不透過像として認められる時期に分けられます。
病巣と周囲の骨組織との境界が明瞭な点が、線維性骨異形成症という少し異なる病変である可能性が出てきます。
【コメント】
後で記載しますが、大きな病変では顎を切除する施設もあります。
症例1のようにある程度小さいうちに摘出して、経過を見ていけば顎を切除しなくて済みますので、早期発見に心がけましょう。
大きくなっても症例2のように十分な準備をして低侵襲の週津を行えば患者さんの負担は少なくてすみます。
病理学的特徴
組織学的には線維芽細胞と線維組織の増殖とその中に不規則な形の線維骨や層板骨ならびにセメント質に類似した石灰化物を散在性に含む組織像を示します。
治療の方法
治療:摘出、一部健常骨を含めた顎骨切除が行われます。
症例
手術は局所麻酔をしたうえでメスなどを用いて舌小帯を延長します。切る部分は粘膜なので、適切に手術が行われると出血などもほとんどなく、術後の痛みもあまりありません。一方で、舌尖下面の前舌腺、口腔底の舌下腺や舌下腺開口部を傷つけないよう注意が必要です。
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- 骨形成繊維種摘出術
(出血などの症例画像あり) -
Case.01
40歳 女性
歯科治療のためにパノラマレントゲンを撮影した患者さんです。
右側下顎犬歯部の根尖に類円形の透過像を認めましたので、CTを撮影しました。
その歯の歯髄が死んでいれば歯根嚢胞も考えましたが歯髄診断では反応があり歯髄は生きていました。
骨形成繊維種かセメント芽細胞腫も考え、摘出術を施行することにしました。
- 骨形成繊維種摘出術
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- 低侵襲な骨形成繊維種摘出術
(出血などの症例画像あり) -
Case.02
他の医療施設で顎の骨を切除(切り落とす)と言われてどうにか低侵襲の治療を希望された患者さんです。
コンピューターシミュレーション手術を考えて、分割して摘出しました。
患者さんは顎が温存できて喜んでくれています。
2010年、口腔腫瘍学会雑誌に論文投稿しました。
- 低侵襲な骨形成繊維種摘出術