口腔内金属アレルギー Metal allergy
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かゆみ、小水泡、紅班、蕁麻疹など
口の中の金属が原因かもしれません
どうしても治らないかゆみ、小水泡、紅班、じんましんなどの不快な皮膚症状の原因が口の中の歯の被せ物などの金属にある場合があります。
金属アレルギーは接触している場所で起きるとは限りません。是非、相談ください。
金属アレルギーは、金属が唾液によってイオン化溶出した金属が原因で起こります。
現在、金属アレルギーの症状のない方でも、口腔内の金属が溶出傾向にある場合、人体のタンパク質と結合し、抗原(アレルギーの原因)となる可能性が、非常に高い状態であるといえます。
金属アレルギーについてMetal allergy Video
歯科用金属アレルギーを疑う疾患の代表例
- 掌蹠膿疱症
- 扁平苔癬
- 湿疹
- 皮膚炎
- 舌炎
- 口唇炎
- 舌痛症
- 歯肉炎
溶出傾向の測定可能な金属
- 金銀パラジウム合金
- プラチナ
- セミプレシャスメタル(パラジウム系)
- ノンプレシャスメタル(ニッケルクロム)
- ハイプレシャスメタル(金80%以上)
- ハイプレシャスメタル(金61~79%)
- 中カラット白金加金合金、14K金合金
- 高カラット白金加金合金、金合金、高カラット金合金
- セミプレシャスメタル(金60%以下)、低カラット白金加金合金
- 純チタン、チタン合金
- ステンレス鋼(矯正線、ブラケット、バンド)
- ニッケルチタン矯正線
- コバルトクロム矯正線
- コバルトクロムワイヤー
- ニッケルクロム合金
- アマルガム合金
- 銀パラジウム合金
- 銀合金
金属アレルギーの豆知識
金属そのものはアレルギーを起こさない?
金属そのものは「アレルゲン」ではありませんが、汗や唾液など、体液によってイオン化した金属が体内に取り込まれます。
そのため、発汗によって、ネックレスや時計のベルトと接する肌が赤くなったり、かゆみが出るのは、汗の塩分がイオン化を促すためです。
アレルギー発症までに時間がかかることが多い
金属アレルギーは、原因となる金属がイオン化して体内に入り込んでアレルゲンの形になっても、即座に発症するものではありません。
多くの場合、5年以上の長い年月をかけて、皮膚に高い濃度で排出されたときに、初めて湿疹などの症状となって表れるものです。また、人によっては金属に対するアレルギーが非常に強く 短い期間と低い濃度でも発症する人もいます。
金属アレルギーの症状
局所性金属アレルギー(接触皮膚炎)
アクセサリーなどを長時間着けることによって汗などと反応して金属イオンが体内に入り、肌にかゆみや湿疹が起こるものです。
一般的によく知られ、金属が当たる部分に皮膚炎が起こるため、原因が分かりやすく、その金属を肌に触れないようにするだけで治ることもあります。
歯科金属による口腔症状(接触性口内炎)
口の粘膜が荒れたり、舌にまだら模様が表れたり、扁平苔癬ができたりします。食べ物の味も分からなくなることもあり、ソムリエなどは仕事を失いかねない症状になるため、歯科金属には厳重な注意が必要です。
全身性金属アレルギー
歯科金属など唾液でイオン化され体内に入った金属が、そこから離れた場所、または全身の症状となって表れるタイプの金属アレルギーです。
実はこちらのタイプのほうが深刻で、多くの人が別の病気、たとえば「肌荒れ」「水虫」などと誤診されているケースが多いのが現状です。
「接触性皮膚炎」「掌蹠膿疱症」「扁平苔癬」「貨幣状湿疹」「異汗性湿疹歯科金属疹」「偽アトピー性皮膚炎」「口腔扁平苔癬」「舌痛症」「異味症」「口唇炎」「口内炎」「歯肉炎」「舌炎」
金属アレルギーの予防のために
口腔内の金属アレルギーは、金属を使用してから数十年を経て突然発症することも多く、すぐに症状が現れるとは限りません。
金属そのものは生体に対してアレルギー性を示しませんが、溶け出してプラスイオンとなり体の蛋白質と結合することによって、それを異物とみなした体が過剰反応を起こすのです。原理は花粉症やアトピーと同じで、決して特殊なものではありません。
そのため、今現在、金属アレルギー反応のない方でも、お口の中の金属によって、アレルギーになってしまうおそれがあります。言いかえると、お口の中に金属が存在し続ける以上、金属アレルギーになる危険性に常にさらされていることになるのです。
当院では、金属アレルギーの原因になる心配のない素材を用いた治療を行っております。
金属アレルギーでお悩みの方、金属アレルギーを予防されたい方は、どうぞお気軽に、ご相談ください。
金属アレルギー治療Metal Allergy Treatment
メタルフリー治療
歯科金属アレルギーの原因となっている金属を特定し、除去します。
歯の被せ物や詰め物を取り替える作業となるノンメタル(メタルフリー)治療を行います。
口腔内に多数の被せ物や詰め物が入っている場合には、基本的にイオン化傾向の高い順に取り除きながら様子を見ていきます。
身体に対する歯科金属の影響Effects of metals on the body
健康保険で使用する
金銀パラジウムは安全か
金銀パラジウム合金は、健康保険で認められている金属なので安全であると漠然と考えている人も多く、歯科医師の多くもそう思っており、安全であると言うかもしれません。
しかし、現在、保険で用いられている12%金銀パラジウム合金は、本当は金合金が歯の詰め物には良いという当時の学会の推奨を、金合金では総医療費や日本の経済力から、そこに落ち着いた経緯があります。つまり、金合金にすると医療費が破たんするので、仕方なしに今の保険の銀歯の素材が決まったということなのです。
一方で、金合金の金にもアレルギーはあり、それが生体に為害作用を及ぼすこともあります。
文献
日本補綴歯科学会歯科用金属企画委員会:歯科用金属の規格並びに銀合金に関する見解,補綴誌,28:1304-1354.1984
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- 誤
- 歯の詰め物・被せ物に使う金属による健康被害は口の中には出ない
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- 正
- 実は全身に出る
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- 質問
- 全身に何か症状がある
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- 回答
- 歯の詰め物・被せ物の金属による健康被害を考える
1928年に歯の詰め物に使う金属で口内炎と肛門周囲炎になった症例が報告。その後、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎と歯の詰め物・被せ物が関連しているという報告が多くみられます。
文献
- FleischmannP.Zur frage der gefahrlichkeit kleinster. Quecksilbermengen. Dtsch Med,1928.
- Veien NK,Hattle T, Justesen O, Norholm A. Oral challenge with metal Salts(I) Vesicular patch-test-negative hand eczema. Contact Dermatitis, 402-406, 1983.
写真の患者様は当クリニックで歯の金属を全てノンメタルに替え、DETOX(解毒)の点滴により皮膚炎が改善した患者さんの初診時の写真です。
歯科金属材料による健康被害の割合
歯科用金属でどんな病気になるのか
- アトピー性皮膚炎(67.5%)
- 掌蹠膿疱症(9.4%)
- 湿疹(8.5%)
その他「乾癬」「にきび」「喘息」「鼻炎」「化学物質過敏症」「蕁麻疹」「鬱(うつ)」「慢性疲労症」「脱毛」「かゆみ」「口内炎」「潰瘍性大腸炎」「花粉症」「口腔扁平苔癬」「リウマチ」「血管炎」
歯科金属材料による
健康被害の学術的なお話
歯科金属による健康被害の症状は、金属が直接接触している口腔内ではなく、そこから離れた遠隔の皮膚に現れることが圧倒的に多いことが知られています。
Fisherは、接触感作が成立した個体で、非経皮的(経口、経気道的)に摂取されたアレルゲンが血流により全身に広がり、到達した遠隔の皮層でアレルギー反応を起こすことを、全身性接触皮膚炎として報告しています。
文献
- FisherAA.ContactDermatitis.
Philaderphia:LeaandFebiger:1995.p.l14-129.
歯科金属による健康被害は、その本体が遅延型アレルギーであり、難治性のアトピー性皮膚炎や湿疹などを含むさまざまな形態の皮膚病変と惹起されることが本邦でも報告されている。
文献
- 足立厚子、堀川達弥:臨皮46:883-889.1992,中山秀夫、村田真道、森戸百子:歯科金属による感作の可能性について,歯界展望,43:382-389,1974.
- 高永和、高理恵子、島津恒敏、丸山剛朗.アトピー性皮膚炎における歯科金属除去による臨床症状の変化に関する研究.補綴誌2000;44:658-662.
Fleischmannによる世界最初の歯科金属による健康被害の報告は、口腔内アマルガム中の水銀による口内炎と虹門周囲炎の症例についてであった。
さらに、Veienらが、歯科金属の健康被害についてその原因として、口腔内の金属がイオンとして溶出し、口腔粘膜や消化管より体内に吸収され、口腔領域だけではなく他の遠隔領域にまで、さまざまな皮膚病変が惹起されることを報告した。
文献
- FleischmannP.Zurfragedergefahrlichkeit kleinsUTU uccksilbenncngen.
DtschMed.,VeienNK.HattelT.Justesen0.
NorholmA.Oralchallenge with metalSalts(I)Vesicular patch-test-negativehandeczema.Contact Dermatiiis 1983: 9: 40 2-106.
歯科用金属の中からイオン化して口腔粘膜や腸管などから体内に吸収される微量金属イオンは、そのほとんどが糞便中に排世されるが、一部は汗・尿・乳汁中に排世されることも知られている。
文献
- 米国研究協議会編:環境汚染物質の生体への影響3ニッケル.p、1.東京化学同人,東京.1977.
このことは、歯の詰め物や被せ物の金属イオンが、母乳を通じて赤ちゃんに感作を起こす可能性を示唆している。また、口腔粘膜や消化管から吸収された口腔内の金属イオンは、血行性に全身に運ばれ、到達した部位で汗などを介して健康被害を起こすと考えることができる。